●コラム「東洋医学って何?」<その4>東洋医学における「構造」

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コラムG
  東洋医学って何?<その4>
 〜東洋医学における「構造」〜

当院では「構造」に注目して問題点を改善し体調を回復させていく手法を用いています。臨床の中で得た実感や培った自分なりの解釈をまじえて、東洋医学における「構造」について考えてみたいと思います。


■東洋医学における「構造」

東洋医学は本人の自然治癒力を発揮させて健康を回復させる治療法です。

自然治癒力が働かなくなる原因を東洋医学では「構造(姿勢)」「食物(環境)」「精神」の3つに分類しています。それぞれ人間が動物と異なっているところは、

〔構造〕
人間は二本足で立っている。
〔食物〕通常、動物は食物が決まっているが人間は嗜好で食物を選ぶなどして偏りが生じる。 
〔精神〕人間は様々なストレスにより身体に大きな影響をうける。

食物の偏りを補ってきたのは漢方薬・薬膳料理で、精神を支えてきたのは東洋思想・哲学です。そして二本足で立っていることによって生じた構造の歪みを矯正してきたのが東洋医学では鍼灸・按摩等です。

現代の西洋医学では四足の動物で実験・証明する手続きが必要なこともあり、二足歩行によって生じる問題や状況を含めた全身の構造バランスを考えることはなく、体を部分に分けて治療を行います。
これに対し、東洋医学の鍼灸・按摩などは二足歩行という人間独特の構造を考慮し、全身のバランスを調整することで健康を回復させていくのです。


■循環障害は「構造」に関係がある

東洋医学には「虚」と「実」という捉え方があります。簡単に言えば「虚」は血が足りない循環障害であり、「実」は血が多すぎる循環障害です。「虚」には補うような鍼を打ったりあたためるとよく、「虚」と「実」は相殺されることが望ましい、とされています。つまり多すぎるところから足りないところへ回してどちらも丁度いい状態にしよう、ということですね。

これを20年前に学生のときに学んだわけですが、では具体的にどういう理由でどのような状態になると「虚」や「実」になるのか、「補うような鍼を打つ」とは身体に対してどういうことをしているのか?その時点ではわかっていないわけです。

それが臨床経験を重ねるうちに自分なりの理解や解釈が生まれ、シンプルな治効理論として見えてくるようになりました。


「虚」「実」の解釈



人間は本来は、ほぼ骨格のバランスで立っていられますが、「構造」が傾いていると倒れないように筋肉などの軟部組織を緊張させて身体を支えようとします。

傾いた側の筋肉は縮んで密度が高まって固まっており、骨格をはさんで反対側は伸びて張っています。どちら側も循環障害が観察され、縮んでいる方は「虚」、伸びて張っている方は「実」と解釈することができます。

筋肉の過緊張・血行障害から神経圧迫や筋肉硬化が起こり機能障害を生じたり、慢性的な筋緊張(これは自覚されにくい一種のストレスとも言えます)から自律神経の入れ替わりがうまくいかなくなり自律神経が乱れ内臓や精神に障害を起こすなどの体調不良や疾患を引き起こします。

治癒のしくみ

治療としては
縮んで固まっている「虚」の側に緊張をゆるませるような鍼を打って緊張を「開放」していきます。

緊張が開放されると骨格が本来のポジションを取り戻し「虚」「実」ともに循環障害は改善され筋肉はニュートラルな状態に戻ります。そしてこの「構造」の問題に端を発する体調不良や疾患も軽快していきます。

>>この理論・手法による臨床試験と学会発表内容へ


(この二種類の筋肉の緊張と「構造」の歪みの関係は、「構造」の歪みが先ではなく内臓疾患から筋肉が影響を受け筋肉の緊張が発生し、それによって骨格構造が歪むと解釈する治療家もいます。)


■鍼は「構造」にアプローチする洗練されたボディ・ワーク

鍼灸の効果は実績として認めながらもその治効理論についてはあまり語られることがありませんが、実は「構造」にアプローチする伝統的かつ洗練されたボディ・ワークであると私は考えています。

構造に注目したボディ・ワークであるオステオパシーやロルフィングでは筋肉や筋膜に働きかけて本来あるべき構造へと改善していきますが、鍼灸もまた筋膜に働きかけ構造を治す治療法であり、その治癒のメカニズムには共通する部分があると言えます。

東洋医学の重要なツボは腱に集中していますが、筋膜が束状になり骨へと連結していく部分が腱であり、鍼はそのツボをピンポイントで狙うことができる優れた手法なのです。鍼灸というと「古くさいもの」「神秘的でよくわからないもの」というイメージがありますが、実はシンプルな治癒のしくみを持った洗練された実績のある治療法なのです。

東洋医学に携わるものとしては、デフォルメされたイメージなどにまどわされず鍼灸の価値や治癒の実態を適正に理解してもらいたいと望みますし、そのためには自分なりの解釈や理論をもってわかりやすく語り表現していきたいと考えています。
(2004/12/13)



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